相続したマンションの売却──戸建てと違う5つの注意点

相続の味方|事情別の売却 事情別の売却

先に結論をお伝えします。

相続したマンションは、戸建てより査定が”当たりやすい”(相場が明確)という利点があります。一方で、戸建てにはない落とし穴が——管理費・修繕積立金の滞納の承継管理規約です。私は買取側にいた立場から、相続マンションを売るときに戸建てと違う5つの注意点を、条文の根拠つきで整理します。

「相続したのがマンションだけど、戸建てと同じように売っていいの?」——結論から言うと、進め方の骨格は同じでも、マンション特有の確認事項があります。ここを押さえておくと、売却がスムーズになります。(相続不動産の売却全体は「相続した不動産の売却 完全ガイド」にまとめています。)

戸建てと違う5つの注意点

【買取側にいた立場から・一次情報】 マンションを査定するとき、私が戸建てと分けて見ていたポイントは次の5つです。

  1. 相場が明確で、査定が当たりやすい:同じマンションの過去の成約事例が参考になるため、戸建てより価格の振れが小さい
  2. 管理費・修繕積立金の”承継”:滞納があると次の所有者に引き継がれる(後述・ここが最重要)
  3. 管理規約・管理組合:ペット可否・リフォーム制限など、規約が売りやすさに影響する
  4. 専有部分と共用部分:自分で直せるのは専有部分だけ。共用部分(外壁・配管など)は組合の管理
  5. 売りやすさ:立地の良いマンションは買い手の幅が広く、戸建てより流動性が高いことが多い

このうち、相続で特にトラブルになりやすいのが2番目です。丁寧に説明します。

最重要:管理費・修繕積立金の滞納は”引き継がれる”

相続したマンションに、前の所有者(被相続人)が滞納していた管理費・修繕積立金があると、それは消えずに引き継がれます。ここは法律上の経路を正確に理解しておく必要があります。

  • あなた(相続人)が引き継ぐ根拠:相続では、被相続人の権利義務を包括的に承継します(民法896条・包括承継)。だから、被相続人が滞納していた管理費も、相続によって当然に引き継ぎます。
  • あなたが売った先(買主)が引き継ぐ根拠:あなたがそのマンションを売ると、買主は区分所有法8条の「特定承継人」として、滞納分の支払義務を引き継ぎます(管理組合は買主にも請求できます)。

つまり、滞納管理費は「相続では包括承継(民法896条)」「売買では特定承継人(区分所有法8条)」という別々の経路で、次の人へ引き継がれていきます。「相続だから区分所有法8条」ではなく、相続人は民法896条、買主は区分所有法8条——この違いを押さえておくと正確です。

実務上のポイントはシンプルで、売る前に管理会社へ「滞納がないか」を確認すること。滞納があると、その分は売却価格から精算されたり、買主が敬遠したりします。相続したら、まず管理費・修繕積立金の状況を確認しましょう(※滞納管理費は、管理規約や集会決議に基づく債権として、区分所有法7条により先取特権の対象にもなります)。

賃貸中・借地権のマンションは別記事へ

普通の分譲マンションではなく、特殊な形の場合は、それぞれ注意点が変わります。

マンションの相場の調べ方

マンションは、同じ建物・近隣の類似物件の”成約事例”(実際に売れた価格)を見ると、相場観がつかめます。売り出し中の価格(希望価格)ではなく、成約価格で見るのがコツです。とはいえ個人で正確に調べるのは手間なので、複数社の査定で相場を集めるのが早道です。査定で業者が何を見ているかは「相続した不動産の査定──業者は何を見ていくらと言うのか」で解説しています。

査定から売却までの流れ(図解)

STEP1 管理費・修繕積立金の滞納の有無を確認
   ↓
STEP2 複数社に査定を依頼(成約事例ベース)
   ↓
STEP3 売り方を決める(買取 / 仲介)
   ↓
STEP4 相続登記 → 売却・引き渡し

例えば、こんなケース(モデルケース)

※説明のための想定例です。築25年・60㎡の分譲マンションを相続したとします。同じマンションの直近の成約事例が複数あり、査定額は各社近い数字に。ところが管理会社に確認すると、被相続人が管理費を数か月滞納していた——。この場合、滞納分は相続人が引き継ぎ(民法896条)、売却時に精算するのが一般的です。先に滞納を把握して精算の段取りを決めておくと、買主も安心して、売却がスムーズに進みます。税金の考え方は「相続不動産を売ると、いくら手元に残る?」もご覧ください。

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📌 あわせて読みたい:本記事は“戸建てとの違い・注意点”です。売却の“手順・順番”は、相続マンション売却の手順(相続登記〜確定申告の7ステップ)

よくある質問(FAQ)

Q. 相続したマンションに滞納があった場合、誰が払うのですか?
相続人が引き継ぎます(民法896条の包括承継)。売却する場合は、売却時に精算するのが一般的です。さらにその買主も区分所有法8条の特定承継人として支払義務を負うため、滞納は売買のたびに次の所有者へ引き継がれていきます。まず管理会社に滞納の有無を確認してください。

Q. マンションは戸建てより売りやすいですか?
立地の良いマンションは成約事例が多く相場が明確で、買い手の幅も広いため、戸建てより流動性が高い傾向があります。ただし管理費・修繕積立金の負担や管理規約の制限もあるため、一概には言えません。

Q. 管理規約は売却に影響しますか?
ペット可否・リフォームや用途の制限などは、買い手の付きやすさに影響することがあります。売却前に管理規約を確認しておくと、買主への説明もスムーズです。

Q. 相続したマンションの相場はどう調べますか?
同じマンションや近隣の類似物件の”成約価格”を見るのが基本です。個人で調べるのは手間なので、複数社の査定を集めて相場観をつかむのが効率的です。

この記事の書き手について

不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、相続したマンションも数多く扱ってきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。なお、管理費の承継・登記・税金の具体的な判断は、管理組合・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。

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