相続した不動産、1人が反対して売れない──共有名義の解決法

相続の味方|事情別の売却 事情別の売却

先に結論をお伝えします。

  • 相続した不動産を売るには、共有者(相続人)全員の同意が必要です(民法251条)。1人でも反対すると売れません
  • 放置すると、固定資産税を払い続けるだけ。しかも反対している人にも税負担は残ります
  • 「自分の持分だけ売る」方法もありますが最終手段。まずは全体でまとまる努力を。その土台になるのが査定です

親から相続した実家を売りたいのに、兄弟の1人が「売りたくない」と反対して話が進まない——。これは相続で本当によくある、根の深い問題です。私は不動産を買い取る側にいて、こうした「相続人の意見が割れた物件」を数多く見てきました。買取側だからこそ言える、現実的な解決の道筋をお伝えします。

(兄弟複数人での相続全般は「兄弟・複数人で相続した不動産の売り方」もご覧ください。)

相続不動産の売却全体の流れは「相続不動産の売り方の全体像」にまとめています。

💡 話を動かす第一歩は「価格を知ること」

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大前提:全員が同意しないと、売れない(民法251条)

まず、動かせない法律から。相続した不動産を売る(=共有物全体を処分する)には、共有者全員の同意が必要です。これは民法251条(共有物の変更)が根拠で、1人でも反対すれば、売却も建て替えもできません。

相続で不動産を共有すると、こういうことが起こります。

  • 兄は「売って現金で分けたい」、弟は「思い出があるから残したい」——意見が割れる
  • 1人が反対するだけで、全体が塩漬けになる
  • 誰も住まない実家に、固定資産税だけがかかり続ける

そして、意外に見落とされがちなのが、税金の問題です。

反対している人にも、税負担は残る(固定資産税の連帯納税義務)

「売りたくない」と反対する人は、そのままにしておけば損をしない、と思っているかもしれません。でも、実は違います。

共有不動産の固定資産税は、共有者全員が「連帯して」納める義務があります(連帯納税義務)。 つまり、反対して売却を止めている人も、固定資産税の負担からは逃れられません。しかも、納税通知書は共有者の代表者に届くため、誰かが払わなければ、他の共有者に全額の請求が来ることもあります。

さらに、共有のまま次の世代に相続が起きると、共有者がどんどん増えて権利関係が複雑化し、ますます売れなくなります。「反対して現状維持」は、実は誰も得をしない、じわじわ損をする選択なのです。

この事実を、反対している共有者にも冷静に伝えることが、話し合いを動かす第一歩になります。

解決の流れ(図解)

      相続した不動産を売りたい
                 │
                 ▼
        相続人全員が同意している?
          ┌──────┴──────┐
         YES            NO(1人でも反対)
          │                  │
          ▼                  ▼
     全体を売却        まず【査定】で価格を出す
    (換価分割/         → 客観的な数字で話し合い
     代償分割)              │
                   ┌────────┴────────┐
                  合意できた       どうしても無理
                   │                  │
                   ▼                  ▼
               全体を売却       遺産分割調停・審判
                             (それでも無理なら
                              最終手段:持分売却)

解決策①:全員で話し合い、分け方を決める(換価分割・代償分割)

一番良いのは、相続人全員で話し合ってまとまることです。分け方には主に2つあります。

  • 換価分割:不動産を売って、その代金を持分割合に応じて全員で分ける方法。全員が現金で受け取れるので、公平でわかりやすい
  • 代償分割:1人が不動産を取得し、他の相続人にはその持分に相当する金銭(代償金)を支払う方法。「実家を残したい」人がいる場合に有効。ただし、取得する人にまとまった資金が必要

どちらにするにせよ、話し合いの土台になるのが「この不動産はいくらなのか」という客観的な数字です。ここが曖昧だと、「もっと高いはず」「いや安い」と感情論になって進みません。だからこそ、まず査定で価格をはっきりさせることが、合意への近道になります。

解決策②:話し合いがまとまらないとき(調停・審判)

どうしても話し合いで解決しない場合は、裁判所の手続きに進むことになります。ここで注意点があります。

遺産分割がまだ済んでいない相続不動産の場合、「共有物分割請求」ではなく「遺産分割調停・審判」を申し立てるのが原則です(最高裁もこの区別を示しています)。まず遺産分割で「誰が何を相続するか」を決める必要があるからです。

ただし、調停・審判は時間も手間もかかります。ここは弁護士など専門家の領域なので、話し合いが行き詰まったら、早めに専門家に相談してください。

解決策③:最終手段としての「持分売却」──ただし慎重に

「自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れる」という方法があります(民法206条)。共有持分だけを専門に買い取る業者も存在します。

ただし、正直にお伝えします。これは最終手段と考えてください。 理由があります。

  • 持分だけを買うのは特殊で、一般の不動産会社では扱えず、専門業者に限られる
  • そのため、価格は全体で売る場合よりかなり安くなる
  • 何より、他の共有者に知らせず持分を売ると、家族・親族の関係が決定的に壊れるおそれがある

私は買取業者として、この「持分だけの買取」は扱ってきませんでした。持分だけ買っても、結局その後、反対していた共有者と粘り強く交渉して、全体を買い取るか、全体で売るかにたどり着くしかないからです。しかもその過程で、反対していた人にも税負担は残り続ける。だったら、最初から全員で全体売却を目指すほうが、みんなにとって得なのです。

だからこそ、持分を売る前に、まず全体でまとまる努力をしてほしい。その最初の一歩が、査定です。

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最後に、買取側にいた私から一つだけ

相続で意見が割れたとき、多くの人が「もう無理だ」と諦めたり、感情的になって関係を壊してしまったりします。でも、買取の現場をたくさん見てきて思うのは、揉めている相続人の間に足りないのは、たいてい「客観的な数字」だということです。

「いくらで売れて、1人いくらもらえるのか」——この数字がはっきりすると、感情論だった話し合いが、驚くほど現実的になります。反対していた人も、具体的な金額を見て「それなら」と態度が変わることが少なくありません。

だからこそ、揉める前に、そして諦める前に、まず複数社に査定を出して、正確な数字を全員で共有してください。 それが、家族の関係も、あなたの取り分も守る、一番確実な方法です。

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📌 あわせて読みたい:他の相続人が動かないなら、自分の持分だけ売るという選択肢(民法206条)

よくある質問(FAQ)

Q. 兄弟の1人が売却に反対しています。売る方法はありますか?
相続した不動産全体を売るには、相続人全員の同意が必要です(民法251条)。まずは客観的な査定額を示し、固定資産税の負担が全員に続くことも伝えて、話し合いの土台を作るのが有効です。どうしてもまとまらない場合は、遺産分割調停・審判という裁判手続きもあります。

Q. 反対している人は、税金を払わなくていいのですか?
いいえ。共有不動産の固定資産税は共有者全員に連帯納税義務があり、反対している人にも負担は残ります。誰かが払わなければ他の共有者に全額請求が来ることもあります。「反対して現状維持」は誰も得をしません。

Q. 自分の持分だけを売ることはできますか?
できます(民法206条)。ただし専門業者に限られ価格も安くなるうえ、他の共有者に無断で売ると家族関係が壊れるおそれがあります。最終手段と考え、まずは全体でまとまる努力をおすすめします。

Q. 話し合いで解決しない場合、どうすればいいですか?
遺産分割がまだ済んでいない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停・審判を申し立てるのが原則です。時間も手間もかかるため、弁護士など専門家に早めに相談することをおすすめします。

この記事の書き手について

不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、相続人の意見が割れた共有名義の物件も数多く見てきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。なお、遺産分割・共有物分割・税金の具体的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。

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