相続不動産を売ると、いくら手元に残る?──本当に注意すべきは税金と残置物

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相続した不動産を売るとき、多くの人が「いろいろ費用を取られて、手元にいくら残るのか分からない」と不安になります。ネットにも「見落とすと損する費用」といった記事があふれています。

でも、買取の現場を長く見てきた立場から、正直にお伝えします。売却でかかる費用の大半は、実はそこまで心配いりません。 本当に注意すべきは、別のところにあります。

私は、相続物件を買い取る側にいた人間です。これまで300件以上の不動産買取に携わってきました。その経験から、「手取り」で本当に気をつけるべきポイントを、正確な制度とあわせてお伝えします。

(買取と仲介で手取りがどう変わるかは、別記事「相続した不動産、買取と仲介どっち?」もご覧ください。)

相続不動産の売却全体の流れは「相続した家・土地を売る手順のまとめ」にまとめています。

💡 手取りを知るには、まず売値から

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売却の「費用」は、実は明細で説明されるので分かりやすい

まず、相続不動産を売るときにかかる主な費用を挙げておきます。

  • 仲介手数料(仲介で売る場合。売却価格に応じて上限が法律で決まっている)
  • 登記費用(相続登記、住宅ローンが残っていれば抵当権抹消登記など)
  • 印紙税(売買契約書に貼る)
  • 測量費(土地の境界を確定する場合)
  • 解体費(更地にして売る場合)
  • 残置物の処分費(家具・家電・遺品などの片付け)

数が多く見えますが、心配しすぎなくて大丈夫です。というのも、これらの費用は、売却を進める過程で不動産会社から明細として一覧で説明されるのが普通だからです。「知らないうちに何かを取られていた」ということは、まず起きません。金額もその都度確認できます。

つまり、「費用で損をする」という不安の多くは、実際にはそれほど現実的ではないのです。では、本当に注意すべきはどこか。ここからが本題です。

本当に分かりにくいのは「税金」──ここは事前に確認を

売主にとって、一番見えにくくて、一番手取りを左右するのが税金(譲渡所得税)です。費用は明細で分かりますが、税金は自分で意識して確認しないと見えてきません。

譲渡所得税の基本的な考え方

不動産を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。計算の考え方は、こうです。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
  • 取得費:亡くなった方がその不動産を買ったときの購入代金や購入時の手数料など
  • 譲渡費用:売るために直接かかった費用(仲介手数料、印紙税、測量費、売却のための解体費など)

この「取得費」で、相続不動産は特に注意が必要です。購入時の契約書が見つからず、取得費が分からない場合、売却価格の5%を取得費とみなして計算することになります。すると差し引ける金額が極端に少なくなり、税額が大きく膨らむことがあります。古い相続物件では、購入時の書類が残っていないことが多いので、ここは要注意です。

特例で税金が大きく変わることがある

相続不動産には、税負担を軽くする特例があります。代表的なものとして——

  • 相続空き家の3,000万円特別控除(一定の要件を満たす相続空き家を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる)
  • 取得費加算の特例(相続税を払った人が、相続開始から3年10か月以内に売ると、払った相続税の一部を取得費に加算できる)

これらが使えるかどうかで、手取りが数百万円変わることもあります。ただし、要件が細かく、この2つは同じ物件では併用できず、どちらか有利な方を選ぶ必要があるなど、判断が難しい。

だから、税金は「売る前に」確認する

ここが一番のポイントです。税金は、売った後に「こんなにかかるのか」と気づいても遅い。 だから、売却を決める前に、「自分の場合、税金はどれくらいかかりそうか」「どんな特例が使えそうか」を確認しておくべきです。

正直にお伝えすると、私は不動産の買取を長く扱ってきた立場で、税金の最終判断は税理士の領域です。 ですので、売却前に税理士に相談するか、税金に詳しい不動産会社に「税金の確認方法」を聞いて、自分で調べるか調べてもらうことを強くおすすめします。(税金の詳しい解説は、別記事で改めてまとめる予定です。)

豆知識:司法書士は「買主が指定」するのが一般的

相続不動産の売却では、登記のために司法書士が関わります。ここで、意外に知られていないことをお伝えします。売買のときの司法書士は、売主ではなく買主が指定するのが一般的です。

理由は、売主側と買主側で、やることの重さが全然違うからです。

  • 売主側の登記:住宅ローンが残っていれば、その抵当権を抹消するだけ(比較的シンプル)
  • 買主側の登記所有権を移転する登記に加え、買主が住宅ローンを使うなら抵当権を設定する登記も必要。しかも、お金を貸す金融機関が「この司法書士を使ってほしい」と指定することが多い

つまり、登記全体を仕切るのは買主側になり、司法書士も買主が選ぶ流れになる。売主は、自分の抵当権抹消をその司法書士に任せる形が多いのです。「なぜ相手が司法書士を決めるの?」と疑問に思う必要はありません。これが通常の流れです。

見落とされがちな”お得情報”:残置物は「宝の山」かもしれない

最後に、これは知っておくと得をする話です。

相続した家には、家具・家電・食器・趣味の道具など、大量の残置物(遺品)が残っていることがほとんどです。多くの人は「これを全部処分するのに、お金がかかる」と考えます。確かに、残置物の撤去には費用がかかります。

でも——その残置物、実は”お金になる”ものが混ざっていることがあります。

まだ使える家具・家電、ブランド品、骨董品、趣味の道具などは、リユース(中古再利用)市場で値がつくことがあります。残置物の片付けを行う業者の中には、こうした使える品を買い取り、リユース市場に流して現金化しているところもあります。だから——

  • 買取に対応した業者に依頼すれば、買取金額を処分費用と相殺できることがある
  • 状態の良い品が多ければ、処分費が浮くだけでなく、収支がプラスになるケースもある
  • 時間と手間をかけられるなら、先にリユース業者やリサイクルショップに買い取ってもらってから片付けを進めると、ちょっとしたお小遣いになることも

もちろん、すべての残置物に値がつくわけではありませんし、量や状態によります。過度な期待は禁物です。ただ、「残置物=処分費がかかるだけの厄介もの」と決めつけて、価値ある品まで一緒に捨ててしまうのは、もったいない。片付ける前に、一度”買取もやっている業者”に相談してみる——これだけで、手取りが少し変わることがあります。

(※家電や大量の廃棄物には処分のルールがあり、業者に頼む場合は、買取価格と作業費用が明細で分かれているか、許可を持つ業者かを確認すると安心です。)

買取なら、費用まわりがシンプルになる

ちなみに、買取で売る場合は、費用面がいくつか軽くなります。

  • 仲介手数料がかからない(買取は不動産会社が直接買うため)
  • 残置物が残ったままでも、現況で引き取ってもらえることが多い(片付けの手間・費用が省ける)
  • 解体やリフォームも、買主である業者側が前提にしていることが多い

もちろん、買取価格は仲介より下がります(その理由は「相続した不動産、買取はなぜ安い?」で解説しています)。ただ、「手間をかけずに、費用まわりをシンプルにして早く現金化したい」なら、買取は有力な選択肢です。

💡 手取りの計算は「売値を知る」ことから

税金も費用も、まず売値が決まらないと計算できません。無料で複数社の査定を受けて、現実的な売値を把握するところから始めましょう。

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📌 あわせて読みたい:相続した空き家を売るなら、税金が大きく変わる専用の特例があります。相続した空き家の3,000万円特別控除【2024年改正】(相続人3人以上は2,000万円・解体は買主でもOKに)。

よくある質問(FAQ)

Q. 相続した家の購入時の契約書が見つかりません。税金はどうなりますか?
取得費が分からない場合、売却価格の5%を取得費として計算することになり、差し引ける金額が少なくなるため税額が高くなりがちです。まずは購入時の書類がないか探し、見つからない場合は税理士に相談して、使える特例がないか確認することをおすすめします。

Q. 譲渡所得税は、売却してからどのタイミングで払いますか?
不動産を売った翌年の確定申告で申告・納税します。売った年の分をまとめて申告するため、売却前に「どれくらいかかりそうか」を把握しておくと、資金の準備がしやすくなります。

Q. 残置物は自分で片付けた方が安いですか?
自分で片付ければ処分費は抑えられますが、量が多いと手間と時間がかかります。買取に対応した業者に頼めば、使える品の買取分で費用を相殺できることもあります。状況に応じて、自分で片付ける分と業者に頼む分を組み合わせるのが現実的です。

Q. 仏壇や思い出の品も処分しないといけませんか?
必ず処分する必要はありません。残したい品は形見として手元に残し、処分するものだけを整理すれば大丈夫です。仏壇の供養に対応している業者もあります。

この記事の書き手について

不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、その中で相続物件も数多く手がけてきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。なお、税金の具体的な計算・判断は税理士の領域のため、本記事は一般的な情報提供にとどめ、実際の税額は専門家にご確認ください。

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