相続した不動産を買取で売るとき、どの業者に頼むかで、手元に残る金額が数百万円変わることも珍しくありません。それなのに、業者選びを「なんとなく」「知り合いだから」で決めてしまう人が、とても多いのです。
私は、相続物件を買い取る側にいた人間です。これまで300件以上の不動産買取に携わってきました。その立場だからこそ言える、「こういう業者選びは危ない」「ここを確認すれば失敗しない」というポイントを、この記事で正直にお伝えします。
買取業者の”内側”を知っている人間の視点は、なかなか表に出てきません。損をしないために、ぜひ知っておいてください。
(買取と仲介で迷っている方は、まず別記事「相続した不動産、買取と仲介どっち?」もご覧ください。)
相続不動産の売却全体の流れは「相続不動産の売り方の全体像」にまとめています。
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やってはいけない①:知り合い・親戚の業者に、安易に頼む
意外に思うかもしれませんが、「知り合いの不動産屋だから安心」は、むしろ危ないことがあります。
理由は、売主との距離が近いからです。距離が近いと、こうなりがちです。
- 「知り合いが言うんだから」と、提示された金額をそのまま受け入れてしまう
- 断りにくい・疑いにくいので、相見積もりを取らない、または少ししか取らない
- 「比較する」という当たり前のことが、人間関係のせいでやりにくくなる
冷静に他社と比べれば、もっと高く売れたかもしれない。でも「知り合いだから」という心理が、その比較を妨げてしまう。これが、知り合いに頼むことの一番の落とし穴です。
そして、もう一つ知っておいてほしいことがあります。不動産の取引では、仲介手数料には法律で上限が決められています。ところが業界には、その手数料とは別に「業務委託費」といった名目で、別途お金が動く構造が存在し得ます。知り合いを介した取引だからといって、あなたに一番有利な条件になっているとは限らない、ということです。
だからこそ——たとえ知り合いに頼むとしても、必ず他の業者からも見積もりを取り、金額を比べてください。 知り合いを疑えという話ではなく、「比較する」という当たり前の防御を、人間関係を理由に省略しないでほしい、ということです。比較して、それでも知り合いが一番良ければ、そこで頼めばいい。
やってはいけない②:口頭だけの価格提示を、そのまま信じる
査定を頼むと、業者が金額を提示してきます。ここで注意してほしいのが、その金額を、口頭だけで伝えてくる業者です。
「うちなら○○万円で買えますよ」と口頭で言うだけで、書面(買付申込書/買付証明書)を出さない業者は、要注意です。
なぜか。口頭の価格は、後からいくらでもズレるからです。
- いざ契約という段階で「やっぱりこの条件だと難しくて」と、価格を下げられる
- 決済時期や引き渡し条件が、最初の話と違ってくる
- 「言った・言わない」の水掛け論になる
本気で買う意思がある業者は、価格や条件を「買付申込書」という書面で明示します。 これは買主が「この価格・この条件で買います」という意思を示す書類です。
正直にお伝えすると、この買付申込書自体には、法的な拘束力はありません(正式な契約ではないので、撤回自体は可能です)。ただ、実務上は、一度書面で買付を出した業者が、それを簡単にひっくり返すことはしにくい。業者どうし・取引関係者との信頼で成り立っている世界なので、書面で出した条件を安易に反故にすると、信用を失うからです。
つまり、書面で買付を出してくるかどうかは、その業者の本気度と信頼性を見分ける、わかりやすい物差しになります。口頭で調子のいいことを言うだけの業者より、きちんと書面で条件を示す業者を選ぶべきです。
正しい進め方:上位5〜10社から「書面」で比較し、会社を確認する
では、どう進めれば失敗しないか。買取側にいた立場からおすすめするのは、この手順です。
① 複数社(できれば5〜10社)に査定を依頼する
1社や2社では、その金額が高いのか安いのか判断できません。まずは複数社に査定を依頼して、金額の相場観をつかみます。一括査定を使えば、一度の入力で複数社にまとめて依頼できます。
② 上位の会社から「買付申込書」を書面でもらう
金額が良かった上位の業者から、口頭ではなく書面(買付申込書)で、価格と条件を出してもらいます。 金額だけでなく、決済の時期や引き渡し条件まで、書面で並べて比較する。こうすれば、「言った・言わない」でズレるリスクを避けられます。
③ そのうえで、各社の会社そのものを確認する
書面が出そろったら、金額だけで飛びつかず、各社のホームページなどで会社の実態を確認します。見るべきポイントは——
- 宅地建物取引業の免許番号が明記されているか
- 会社の所在地・沿革・実績がきちんと載っているか
- 相続物件の取り扱い実績があるか
金額が一番高くても、会社の実態が見えない業者は避けた方が無難です。逆に、書面で誠実に条件を示し、会社情報も明確な業者なら、安心して任せられます。
この「①複数社に依頼 → ②書面で比較 → ③会社を確認」という3ステップを踏むだけで、業者選びの失敗はぐっと減ります。
💡 まずは複数社に査定を依頼するところから
上記の進め方の出発点は、複数社の査定を集めることです。一括査定なら、一度の入力で複数社にまとめて無料で依頼でき、比較の土台がすぐに作れます。
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相続物件だからこそ、見ておきたいこと
相続した不動産の売却では、通常の売却にはない事情が絡みます。だから、業者選びでもここを見ておくと安心です。
- 相続物件の取り扱いに慣れているか(遺産分割協議書や相続登記の段取りを理解しているか)
- 司法書士・税理士と連携できるか(相続登記や税金の相談が必要な場面で頼れるか)
- 権利関係が複雑な物件でも対応できるか(複数相続人、私道、告知事項ありなど)
こうした複雑さに慣れた業者なら、話がスムーズに進みます。相続の事情を説明したときの反応を見れば、慣れているかどうかはある程度わかります。
(複数相続人の売却については「兄弟・複数人で相続した不動産の売り方」、買取価格の決まり方は「相続した不動産、買取はなぜ安い?」もあわせてご覧ください。)
まとめ:業者選びで損しないための鉄則
- 知り合い・親戚だから、と安易に頼まない(比較を人間関係で省略しない)
- 口頭だけの価格提示を信じない(書面=買付申込書を出す業者を選ぶ)
- 上位5〜10社から書面で比較し、金額だけでなく条件も並べて見る
- 各社の会社の実態(免許番号・所在地・実績)を確認する
- 相続物件は、相続に慣れた業者・士業と連携できる業者を選ぶ
業者選びは、少し手間をかけるだけで、結果が大きく変わります。「なんとなく」で決めず、複数社を書面で比較する——これだけで、あなたの手元に残る金額は変わってきます。
💡 次の一歩:比較の土台を作る
まずは複数社の査定を集めましょう。金額を並べて初めて、「どの業者が信頼できるか」が見えてきます。無料で依頼できます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 査定額が一番高い業者を選べば間違いないですか?
金額は重要ですが、それだけで決めるのは危険です。口頭で高い金額を言っておいて、契約直前に値下げしてくるケースもあります。書面(買付申込書)で価格と条件を示す業者かどうか、会社の実態が確認できるかも合わせて判断してください。
Q. 知り合いの不動産屋に頼もうと思っています。やめた方がいいですか?
知り合いが悪いわけではありません。ただ、比較せずに頼むと、それが本当に有利な条件か分からなくなります。知り合いに頼むとしても、他社からも見積もりを取って比べたうえで判断するのがおすすめです。
Q. 買付申込書をもらったら、必ず売らないといけませんか?
いいえ。買付申込書は業者側が「この条件で買いたい」と示す書類で、あなたが必ず売る義務を負うものではありません。複数社の買付を並べて、納得できる条件の業者を選べば大丈夫です。
Q. 何社くらいに査定を頼めばいいですか?
最低でも3社、できれば5社以上に依頼すると、金額の相場観がつかめます。一括査定を使えば、一度の入力で複数社にまとめて依頼できるので効率的です。
この記事の書き手について
不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、その中で相続物件も数多く手がけてきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。

