相続した実家が「違反建築です」と言われたら——実は、普通の売り方では売れないかもしれません。
理由はシンプルです。銀行が、その家に住宅ローンを貸さないから。買主はローンが組めず、買いたくても買えない。私は買取の現場で、「違反建築だから融資が付かず、話が丸ごと消える」という場面を何度も見てきました。ただ、出口はあります。順に見ていきましょう。
先に結論をお伝えします。
まず「違反建築」なのか「既存不適格」なのかを見分けることが出発点です。既存不適格(建てた時は合法・後の法改正で不適合)は違反ではなく、住宅ローンも原則使えて普通に売れます。一方、違反建築(建てた時点で違法)は住宅ローンが付きにくく、市場で売るのが難しい。その場合の現実的な出口は、ローンに頼らず現金で買える”訳あり専門の買取”です。私は不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士として、どちらの立場にも偏らずに整理します(登記・建築の個別判断は専門家の領域です)。
相続した実家が古い家だと、いざ売ろうとして「これは違反建築ですね」「既存不適格です」と言われ、話が止まることがあります。この2つ、名前は似ていますが意味も、売れやすさも、まったく違います。(相続した家の売り方の全体像は「相続した不動産の売却 完全ガイド」にまとめています。)
まず、この3つの勘違いを正しましょう
❌ 「既存不適格=違反だから、売れない」
✅ 違います。既存不適格は違反ではありません。合法で、住宅ローンも原則使え、普通に売れます。
❌ 「古い家は、みんな違反建築」
✅ 違います。建てた”当時”に合法だったなら、今の基準に合わなくても既存不適格であって、違反ではありません。
❌ 「違反建築だと、もう手放せない」
✅ 手放せます。市場では売りにくいですが、現金で買える専門の買取という出口があります。
「違反建築」と「既存不適格」はどう違う?
| 違反建築 | 既存不適格 | |
|---|---|---|
| いつ違法に | 建てた”時点”で違法(違法増築・建蔽率オーバー・検査済証なし等) | 建てた時は合法。後の法改正等で基準に不適合に |
| 違反か | 違反物件 | 違反ではない・そのまま使える |
| 住宅ローン | かなりの確率で通らない(検査済証なし物件は融資しないのが基本) | 原則利用可(台帳記載事項証明書等で代替できることも) |
| 売りやすさ | 市場では売りにくい | 通常どおり売れることが多い |
つまり、「既存不適格」と分かれば、過度に心配はいりません。問題は「違反建築」と判断された場合です。
なぜ違反建築は”売れない”のか──融資が止まる連鎖
市場で売れなくなる理由は、お金の流れが止まるからです。
違反建築(検査済証なし 等) ↓ 買主が住宅ローンを組めない ↓ 現金で買える人しか買えない → 買主がほとんど見つからない ↓ 一般の不動産会社も、転売時にまた融資が付かないので敬遠 ↓ 市場に出しても、動かない
現場で見た実例(土地の一部が”収用”されていた家)
【買取の現場から】 法律の話は表のとおりですが、現場では、思わぬ形で”違反建築”になっている家があります。以前、都内のある物件を仕入れようとしたときのことです。調べると、その土地は過去に一部が「収用」されていました(都市計画道路のために、敷地の一部が公共に取られていた)。
敷地が減った結果、残った土地に対して建物が大きすぎる状態——つまり建蔽率・容積率がオーバーになっていました。金融機関に仕入れの融資を相談すると、「違反建築に該当するので、融資はできません」との回答。念のため都庁で確認すると、担当者からこう説明されました——「平成16年より前の土地の収用は、違反建築の扱いになる」。結局、融資が引けず、その話は断念しました。
「収用で違反建築」になる理由(平成16年の法改正)
これは理不尽に聞こえますが、法律の歴史に理由があります。ポイントは建築基準法86条の9(平成16年=2004年の改正で新設)です。
- 改正前(平成16年より前の収用):公共事業で敷地が減って基準オーバーになっても、既存不適格として救済されず、「違反」として扱われた(道路に協力したのに違反になる、という不合理があった)
- 改正後(平成16年以降):収用で不適格になった建物は「既存不適格」として扱われるようになった(不合理を是正)
つまり、同じ「収用で敷地が減った家」でも、その収用がいつ行われたかで、違反建築になるか既存不適格になるかが分かれるのです。相続した実家にこうした事情が隠れていることは、実際にあります。「なぜ違反扱いなのか」は、建てた経緯や収用の時期まで確認しないと分かりません。
【買取側の本音】なぜプロは”違反建築”を嫌がるのか
買取業者が違反建築を敬遠する本当の理由は、「自分が買っても、次に売るとき、また買主にローンが付かない」からです。出口が狭い物件は、在庫として抱えるリスクが高い。だから多くの会社は手を出しません。——逆に言えば、違反建築や既存不適格を”承知のうえで、現金で買える”専門の買取業者なら、こうした家でも引き受けられます。市場で買主を探すのではなく、業者自身が買主になるので、ローンの壁を越えられるのです。売れないと諦める前に、まず「これは違反なのか既存不適格なのか」を確かめることが先決です。
相続した違反建築・既存不適格の家、2つの出口
- 既存不適格だった場合:違反ではないので、通常の売却が可能なことが多い。まずは複数社の査定で相場を把握(→「買取業者の比較と選び方」)
- 違反建築だった場合:市場では売りにくいので、現金で買える”訳あり専門の買取”が現実的。再建築不可などと同じく、専門業者の出番です(→「再建築できないと言われたら」「空き家は買取で売れるか」)
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違反建築・既存不適格・再建築不可——市場で敬遠される家ほど、訳あり専門の買取が出口になります。現金で買えるので、住宅ローンの壁を越えられます。売れないと諦める前に、まず無料で価値を確かめてみてください。
「そもそも違反なのか既存不適格なのか、通常の売却もできるのか」を知るには、まず複数社の査定で相場観と反応を見るのが早道です。
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次にやること(チェックリスト)
☐ 「違反建築」なのか「既存不適格」なのかを確認する(役所・専門家で)
☐ 検査済証・建築確認の有無を調べる
☐ 敷地に収用など、後から不適格になった事情がないか確認する
☐ 既存不適格なら通常売却+一括査定で相場を把握
☐ 違反建築なら訳あり専門の買取に相談する
☐ 建築・登記の個別判断は専門家に確認する
よくある質問(FAQ)
Q. 既存不適格の家は、住宅ローンで売れますか?
既存不適格は違反ではないため、原則として住宅ローンを利用できます。検査済証がない場合も、台帳記載事項証明書などで代替できることがあります。ただし規制に多く触れる場合は個別に金融機関へ確認してください。
Q. 違反建築だと、まったく売れないのですか?
市場(一般の買主)には売りにくいですが、現金で買える訳あり専門の買取なら引き受けられることがあります。「売れない」と「市場で売りにくい」は別物です。
Q. なぜうちの家が違反建築なのか、心当たりがありません。
過去の違法増築や、敷地の一部が収用されて基準オーバーになったケースなど、後から違反扱いになることがあります。特に平成16年より前の収用は違反扱いになり得ます。役所で経緯を確認してみてください。
この記事の書き手について
不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、その中で相続物件も数多く手がけてきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。なお、建築基準法上の判断は役所・建築士に、登記は司法書士に、税金は税理士にご確認ください。
最終更新日:2026年7月7日(建築基準法86条の9・平成16年改正ほか、法令確認済み)

