先に結論をお伝えします。
- 借地権のマンションでも売却は可能です。ただし種類の見極めが重要です
- 借地権は「権利の性質(地上権/賃借権)」と「契約の種類(旧法/普通/定期)」の2つの軸で分かれ、これで売りやすさが変わります
- 実は地主が誰か(寺・企業など)でも、売りやすさが大きく変わります
親から相続したマンションが「借地権」だった。土地は自分のものではない——。そう聞くと「売れないのでは」と不安になりますが、心配いりません。私は不動産を買い取る側にいて、借地権・地上権のマンションを何度も売買してきました。 買取側だからこそ分かる、借地権マンションのリアルな売り方をお伝えします。
(相続不動産売却の全体像は「相続した不動産、売却の流れは?」もご覧ください。)
相続不動産の売却全体の流れは「相続した家・土地を売る手順のまとめ」にまとめています。
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そもそも「借地権マンション」とは
借地権マンションとは、建物(マンション)は所有しているが、その土地は地主から借りているマンションのことです。土地代がないぶん、所有権マンションより安く買え、土地の固定資産税もかかりません(土地の税金は地主負担)。
ただし、相続して売るときには、その借地権が「どの種類か」を正しく把握することが欠かせません。借地権は、2つの異なる軸で分類されるからです。
軸①:権利の性質は「地上権」か「賃借権」か(民法)
まず1つ目の軸は、権利の性質です。借地権は「地上権」と「賃借権」に分かれます(借地借家法2条)。
賃借権(実際にはこちらが大半)
賃借権は「債権」で、地主に対して土地を借りる権利です。日本の借地権のほとんどがこの賃借権です。
- 売却するには、地主の承諾が必要(承諾を得るために「譲渡承諾料」を払うのが一般的。相場は借地権価格の5〜10%)
- 住宅ローンは、金融機関が地主の承諾書を求めることが多く、買主がローンを組むハードルが上がる
なお、地主がどうしても承諾しない場合も、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める制度があります(借地借家法19条)。手続きは弁護士にご相談ください。
地上権(強い権利・ただし稀)
地上権は「物権」で、土地そのものに直接及ぶ強い権利です(民法265条)。
- 売却に地主の承諾が不要(自由に譲渡できる。売却後の報告だけでよい)
- 地上権自体に抵当権を設定できるため、買主が住宅ローンを組みやすい
正直にお伝えすると、地上権のマンションを扱った経験から言えば、地上権マンションは、所有権に比べれば住宅ローンの枠はやや減るものの、問題なくその相場で流通します。 「借地だから売れない」ということはありません。
登記簿謄本(土地の「権利部(乙区)」)に「地上権設定」の記載があれば地上権、なければ賃借権の可能性が高いです。
【大切な区別】地主の承諾が必要になるのは「売却(譲渡)」のときです。相続で借地権を引き継ぐこと自体には、地主の承諾は要りません(相続は譲渡ではなく、権利をそのまま承継するためです)。「相続したら地主の許可がいるのでは」と心配される方が多いのですが、許可が要るのは”売るとき”です。なお、相続の際に地主から名義書換料を求められることもありますが、相続では原則として不要とされます(契約内容により異なるため、契約書と地主の意向を確認しましょう)。
軸②:契約の種類は「旧法・普通・定期」のどれか(借地借家法)
もう1つの軸が、契約がいつ・どの法律で結ばれたか、という分類です。相続した借地権マンションの価値は、実はこちらの軸で大きく変わります。 ここを見落とすと危険です。
旧法借地権(1992年8月以前の契約)
1992年8月の借地借家法施行より前に結ばれた借地権です。今も経過措置で有効で、更新時も旧法のまま引き継がれます。更新でき、半永久的に借り続けられるため、借りる側に強く、価値が落ちにくいのが特徴です。古くからある借地権マンションはこれが多いです。
普通借地権(1992年8月以降・更新あり)
新法(借地借家法)の借地権で、更新ができるタイプ。地主に正当事由がなければ更新を拒めないため、こちらも長く借り続けられます。存続期間は当初30年以上、更新後は20年→10年。
定期借地権(更新なし・期間が来たら返す)── 相続で特に注意
契約更新がなく、期間満了で土地を地主に返す借地権です。3種類あります。
- 一般定期借地権:存続期間50年以上。分譲マンションでよく使われる
- 事業用定期借地権:10年以上50年未満。事業用のみ(居住用マンションは対象外)
- 建物譲渡特約付借地権:30年以上。期間満了時に地主が建物を買い取る
相続で最も注意すべきは、この定期借地権のマンションです。理由は——残りの契約期間(残存期間)が短くなるほど、価値が大きく下がるからです。更新がなく、いずれ土地を返して建物も解体(または地主に譲渡)することになるため、期間満了が近づくほど売りにくく、住宅ローンも組みにくくなります。相続した借地権マンションが定期借地権なら、あと何年残っているかを確認してください。残存期間は、早く動くほど有利に働きます。
借地権マンション売却の流れ(図解)
相続した借地権マンションを売りたい
│
┌──────────┴──────────┐
【軸①】権利の性質 【軸②】契約の種類
│ │
地上権 → 承諾不要・ 旧法/普通 → 更新あり・
ローン組みやすい 価値が落ちにくい
│ │
賃借権 → 地主の承諾・ 定期 → 更新なし・
譲渡承諾料5〜10% 残存期間が短いほど価値↓
└──────────┬──────────┘
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地主の属性を確認(寺・企業=安心)
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借地権に慣れた業者に査定を依頼
(買取なら承諾交渉も含めて対応可)
買取側が見る「地主の属性」
これは、借地権マンションを何度も買ってきた私だからこそお伝えできる、実務のコツです。
賃借権の借地権マンションの案件が来ると、買取業者はまず「地主が誰か」を特定します。 地主の属性によって、売却後のリスクが変わるからです。
- 地主が寺・宗教法人や、大手企業の場合:更新料や地代を不当に値上げされたり、売却の承諾で揉めたりする心配が少ない。安定していて扱いやすい
- 地主が個人の場合:代替わりや事情で、更新料の値上げや承諾トラブルが起きることがある
だから買取業者は、地主の属性を見て「安心して扱えるか」を判断します。逆に言えば、地主が寺や企業など安定した相手なら、借地権マンションでも売りやすく、良い条件がつきやすいのです。
相続した借地権マンション、売却で押さえるべき点
- 更新料:更新時に更新料がかかる場合がある(相場は借地権価格の5〜10%。定期借地権にはそもそも更新がない)
- 地代:毎月の地代が発生する。買主のランニングコストになるため金額を把握
- 譲渡承諾料(名義書換料):賃借権を売る際、地主の承諾を得るために支払うのが一般的
- 残存期間:特に定期借地権は、残り期間が短いほど価値が下がる
こうした点が絡むため、借地権マンションは借地権の扱いに慣れた業者に相談するのが安全です。買取なら、地主との承諾交渉まで含めて対応できることも多く、相続人の手間を減らせます。
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最後に、買取側にいた私から一つだけ
借地権マンションを相続すると、「土地が自分のものじゃないから、二束三文にしかならないのでは」と不安になる方が多いです。でも、それは思い込みです。
私は借地権・地上権のマンションを何度も売買してきましたが、地上権や旧法・普通借地権なら相場で普通に流通しますし、賃借権でも地主が安定した相手なら十分に良い条件で売れます。 大事なのは、「地上権か賃借権か」「旧法・普通・定期のどれか」「地主は誰か」を正しく見極めて、その物件の本当の価値を分かってくれる業者に出すことです。
借地権を理解していない業者に出すと、「借地だから」と一律に安く査定されかねません。だからこそ、借地権の実績がある業者を含めて、複数社に査定を出してください。 借地権マンションは、種類を見極めて出す相手を間違えなければ、ちゃんと価値がつきます。
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📌 あわせて読みたい:相続マンションを売る全体の流れは、相続マンション売却の手順(相続登記〜確定申告の7ステップ)。
よくある質問(FAQ)
Q. 借地権のマンションは売れますか?
売れます。多くは賃借権のため地主の承諾(譲渡承諾料)が必要ですが、承諾を得れば売却可能です。地上権なら地主の承諾も不要で、相場で普通に流通します。
Q. 相続した借地権が「定期借地権」でした。売れますか?
売れますが、定期借地権は更新がなく、残りの契約期間が短いほど価値が下がります。あと何年残っているかを確認し、早めに動くことをおすすめします。
Q. 賃借権と地上権、旧法か定期か、どう調べますか?
権利の性質(地上権/賃借権)は土地の登記簿謄本「権利部(乙区)」で、地上権設定の記載があれば地上権です。契約の種類(旧法/普通/定期)は、地主との土地賃貸借契約書で確認できます。契約年月日が1992年8月より前なら旧法借地権です。
Q. 借地権マンションは住宅ローンを組んで買ってもらえますか?
地上権なら抵当権を設定でき、買主はローンを組みやすいです。賃借権は地主の承諾書が必要になるなどハードルは上がりますが、対応する金融機関もあります。定期借地権は残存期間がローン年数に影響します。買主がローンを組めるかは売りやすさに直結します。
この記事の書き手について
不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、借地権・地上権のマンションも何度も売買してきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。なお、借地権の契約内容や税金の具体的な判断は、弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。