相続した広い土地、分けて売れば高く売れる?──個人の「分譲」は違法です

相続の味方|事情別の売却 事情別の売却

先に結論をお伝えします。

  • 個人が、1つの土地を分けて複数の人に売ることは、原則できません(宅建業法違反になります)
  • 知らずにやると、3年以下の拘禁刑(旧・懲役)または300万円以下の罰金という刑事罰のおそれがあります
  • 相続した広い土地は、宅建業者に一括で買い取ってもらうのが安全で確実です

相続した実家の土地が広すぎて売りにくい。「だったら2つ3つに分けて売れば、手頃な価格になって売りやすいし、合計すれば高く売れるのでは?」——そう考える人はとても多いです。でも、ここに大きな落とし穴があります。

私は不動産を買い取る側にいた人間で、これまで300件以上の買取に携わってきました。相続した広い土地も数多く扱ってきました。その立場から、なぜ個人が土地を分けて売れないのか、どうすれば安全に手放せるのかを正確にお伝えします。

(相続した戸建て・土地の落とし穴全般は「相続した戸建て・土地、売る前に要注意」もご覧ください。)

相続不動産の売却全体の流れは「相続した家・土地を売る手順のまとめ」にまとめています。

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判断の流れ:あなたの土地は「分けて売れる」か

まず、自分がどのケースかを確認してください。

      広い土地を売りたい
             │
             ▼
     どう売ろうとしている?
             │
   ┌─────────┼─────────────┐
   ▼         ▼             ▼
1人にそのまま  分けて複数人に   分けて片方だけを
 全部売る     別々に売る      隣地・親戚に売る
   │           │              │
   ▼           ▼              ▼
  OK        ✕ 分譲=違法     △ グレー
(免許不要)(宅建業免許が必要)(要・専門家確認)
   │           │
   │           ▼
   │      個人はできない
   │           │
   └─────┬─────┘
         ▼
   宅建業者に一括買取してもらう
      (安全・確実)

「分けて、複数の人に、別々に売る」——これが違法になるルートです。詳しく説明します。

大前提:土地を分けて売るには「分筆」が必要

「土地を分けて売る」には、まず分筆(ぶんぴつ)という手続きが必要です。

自分で「ここからここまでが1区画」と目印を立てても、法律上は意味がありません。登記簿の上では1つの土地(一筆)のままだからです。土地を物理的に分けて別々に売れるようにするには、土地家屋調査士に依頼して境界を測量し、分筆の登記をする必要があります。費用は数十万円から、場合によっては100万円以上かかります。

問題は、その先です。

個人が「分けて複数の人に売る」と宅建業法違反

ここが最重要ポイントです。1つの土地を分筆して、複数の相手にそれぞれ別々に売る行為は「分譲」と呼ばれ、宅地建物取引業(宅建業)にあたります。 そして宅建業を行うには免許が必要です。つまり、免許を持たない個人が、土地を分けて複数の人に売ることは、原則としてできません。

「自分の土地を売るだけなのに、なぜ?」と思うかもしれません。理由はこうです。

  • 自分の家や土地を、そのまま1人に売る → 1回限りの取引なので宅建業にあたらない(個人でOK)
  • 1つの土地を分けて、複数の人に別々に売る → 「反復継続して売る」とみなされ、宅建業にあたる(免許が必要)

たとえ1回の販売のつもりでも、区画割りして複数の人に売る計画なら「業として」の取引と判断されます。これは相続した土地でも同じで、「相続で受け継いだ広い土地を分けて分譲地として売りたい」も、個人にはできません。

なぜ「業として」にあたるのかは、宅地建物取引業法2条2号と、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第2条第2号関係)が、①取引の対象者 ②目的 ③取得の経緯 ④態様 ⑤反復継続性の5つを総合的に判断すると定めていることが根拠です。

知らずにやると刑事罰

怖いのは、単なるルール違反では済まないことです。無免許で分譲行為をすると、宅建業法違反(12条1項)として3年以下の拘禁刑(旧・懲役)または300万円以下の罰金(またはその両方)という重い刑事罰の対象になり得ます。前科がついてしまう。

そして注意してほしいのは——「不動産会社から分割して売る提案をされた」場合でも、売主であるあなたが罰せられるリスクがあることです。実際に、一部の不動産会社が「土地を2つに分けて売りましょう」と提案し、売主が知らないまま違法な状態になりかけた事例もあります。「業者が言ったから」は理由になりません。

具体例で見る

例えば、こういうケースで考えます(あくまで説明のための例です)。

  • 相続した土地:200坪、坪単価30万円の住宅地
  • そのまま売ると:200坪 × 30万円 = 6,000万円

この6,000万円という価格は、一般の個人がマイホーム用に買うには高すぎて、買い手がなかなか見つかりません。そこで「100坪ずつ2つに分けて、3,000万円で2人に売れば売りやすいのでは」と考える——これがまさに「分譲」=違法になるルートです。分けて複数人に売った瞬間、無免許の宅建業になってしまう。

では、この200坪をどうすればいいか。答えは次の通りです。

相続した広い土地の、安全な手放し方

① 宅建業者(不動産会社)に一括で買い取ってもらう

一番シンプルで確実なのが、土地全体をそのまま宅建業者に買い取ってもらう方法です。分筆も分譲も、免許を持つ業者側が責任を持って行うので、あなたが法律違反になる心配はありません。分筆費用や売れ残りリスクも業者が引き受けます。広い土地を安全に現金化するなら、これが現実的です。

② 宅建業者に仲介を頼んで、1人の買い手に売る

分けずに、土地全体を1人の買い手(またはその土地を分譲したい不動産会社)に売る方法です。不動産会社に仲介を依頼して買い手を探してもらいます。ただし広い土地は買える人が限られるため、時間がかかることがあります。

補足:例外的にできるグレーなケース

分筆した土地の一方を業者に買い取ってもらい、もう一方を隣地の人や親戚など「特定の相手」に売るケースは、「不特定多数への販売」にあたらないため違法にならない可能性があります。ただしこの線引きは判断が難しく、取得の経緯や売る相手によってグレーです。自己判断は危険なので、必ず宅建業者や専門家に相談してください。

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まとめ

  • 土地を分けて売るには、まず分筆(土地家屋調査士に依頼・数十万〜100万円超)が必要
  • 個人が1つの土地を分けて複数の人に売る「分譲」は宅建業にあたり、免許がないとできない
  • 無免許でやると3年以下の拘禁刑(旧・懲役)または300万円以下の罰金という刑事罰のおそれ
  • 「不動産会社に提案された」場合でも、売主が罰せられるリスクがある
  • 相続した広い土地は、①宅建業者に一括買取 ②仲介で1人の買い手に売るのが安全
  • 分けて売れるかの判断は、自己判断せず必ず宅建業者・専門家に相談を

最後に、買取側にいた私から一つだけ

この記事を「査定してください」で終わらせたくありません。買取の現場を見てきた私だからこそ、一つだけ言えることがあります。

「分けて売れば高く売れる」という提案には、特に気をつけてください。

広い土地の売却では、いろいろな提案が飛び交います。中には、売主が違法になるリスクを負う提案や、業者に都合のいい安い金額での買取提案も混じっています。だからこそ、まず土地全体の価値を、複数の業者に査定してもらって把握してください。 1社の言い値で動くのではなく、複数の数字を持って初めて、その提案が本当に自分にとって得なのかを判断できます。広い土地は動く金額が大きいぶん、この一手間が数百万円の差になります。

💡 複数社で比べることが、損しない第一歩

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📌 あわせて読みたい:共有で分けにくいときは、自分の持分だけ売るという選択肢(民法206条)

よくある質問(FAQ)

Q. 相続した土地を2つに分けて、2人の別々の人に売るのはダメですか?
個人が1つの土地を分けて複数の人に売る行為は「分譲」とされ、宅建業の免許が必要です。免許のない個人が行うと宅建業法違反になるおそれがあります。分けて売りたい場合は宅建業者に相談してください。

Q. 分筆して、片方だけ売るのもダメですか?
分筆して片方だけを1人の買い手に売るのは、1回限りの取引なので問題ないと考えられます。違法になりやすいのは「複数の区画に分けて、複数の人にそれぞれ売る」ケースです。ただし判断が難しいので専門家に確認するのが安全です。

Q. 不動産会社が「分けて売りましょう」と言ってきました。従って大丈夫ですか?
売主であるあなたが免許を持たない場合、分譲は違法になるおそれがあり、提案に従った結果あなたが罰せられるリスクもあります。その提案が適法か、別の宅建業者にも確認することをおすすめします。

Q. 広すぎて売れない土地は、どうすればいいですか?
宅建業者に一括で買い取ってもらう方法が現実的です。広い土地や需要の低い土地の買取に対応した業者もあります。まずは複数社に査定を依頼して、いくらで売れるかを把握しましょう。

この記事の書き手について

不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、相続した広い土地や扱いの難しい物件も手がけてきました。仲介業者・弁護士から案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、不動産の売却を発信しています。なお、分筆や分譲の可否は個別の状況・自治体の基準によるため、実際の判断は宅建業者・土地家屋調査士などの専門家にご確認ください。

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