「相続した実家、今は使わないけど、いつか誰か住むかもしれないし……」——そう考えて、空き家をそのままにしている人はとても多いです。でも、はっきり言います。相続した空き家の放置は、時間が経つほど損が膨らむ選択です。
私は、相続物件を買い取る側にいた人間です。これまで300件以上の不動産買取に携わり、長く放置されて傷んだ空き家も数多く見てきました。その経験から言うと、「放置の末路」には決まったパターンがあります。そして2023〜2024年の法改正で、放置のペナルティはさらに重くなりました。
この記事では、相続した空き家を放置すると具体的に何が起こるのかを、買取のプロの目線と最新の制度の両面からお伝えします。
(相続不動産の売却全般は、別記事「相続した不動産、買取と仲介どっち?」もあわせてご覧ください。)
相続不動産の売却全体の流れは「相続した不動産の売却 完全ガイド」にまとめています。
💡 まず現状を知りたい方へ
「売るかどうか」を決める前でも、まず今いくらで売れるのかを知っておくと判断がしやすくなります。無料で査定を受けられます。
※リンク準備中(提携承認後に有効化されます)
リスク①:建物は「人が住まなくなった瞬間」から急速に傷む
空き家は、放置すると驚くほど速く劣化します。人が住んでいれば、換気され、水が流れ、小さな不具合もすぐ直る。でも空き家はそれがないので、傷みが一気に進みます。
私が買い取ってきた放置物件でも、こういう状態を何度も見てきました。
- 雨漏りを放置した結果、天井や柱の木材が腐り、構造まで傷んでいた
- 庭木や雑草が伸び放題で、隣地にはみ出していた
- 動物(ネコ、ハクビシン、ネズミなど)が住み着き、天井裏や床下が荒らされていた
- 湿気とカビで、室内が住める状態ではなくなっていた
こうなると、前に別記事(相続した戸建て・土地の落とし穴)でも触れたように、リフォームで直せる範囲を超えてしまい、建物としての価値がほぼなくなることも珍しくありません。「いつか売ろう」と思っていたのに、放置している間に売れる状態でなくなっていた——これが放置の一番典型的な末路です。
リスク②:防犯・防災の面で、周囲に危険を及ぼす
放置された空き家は、犯罪や災害の温床にもなります。これは所有者だけの問題では済みません。
- 空き巣や不法侵入の標的になる
- ゴミの不法投棄をされる
- 放火のリスクが高まる
特に、ゴミが溜まったり、いわゆる「ゴミ屋敷」状態になっている空き家は、放火の格好の標的です。私が扱った物件でも、周囲にゴミが溜まって放火の危険が指摘され、行政から撤去の勧告が来て、余計な費用が発生したケースがありました。放置していただけのつもりが、片付け費用・撤去費用という予定外の出費が降りかかってくるのです。
そして、もし空き家が原因で火災や倒壊が起き、近隣に被害を与えれば、所有者が損害賠償を求められる可能性もあります。「使っていない家」でも、持っている限り責任からは逃れられません。
放置すると「知らない他人に住み着かれる」ことがある
これは意外に知られていませんが、放置された空き家には、まったく知らない他人が勝手に住み着く(不法占拠)ことが、実際に起こります。
たとえば、相続した空き家を数年放置していた人が久しぶりに様子を見に行ったら、知らない家族が普通に暮らしていた——という事例があります。電気や水道まで無断で引き直して生活していた、というケースまであります。
厄介なのは、勝手に住み着くのは犯罪(住居侵入罪や不動産侵奪罪)であっても、所有者が自分の力で追い出すことは法律で禁じられている(自力救済の禁止)という点です。相手がいる部屋に勝手に入って荷物を出す、といった行為は、たとえ持ち主でも許されません。警察も、悪質なケースを除いてはすぐに動かないことが多く、退去させるには明け渡しの訴訟が必要になります。
その結果、こういうことが起こります。
- 退去まで数か月〜1年近くかかることもある(訴訟・強制執行の手続きが必要)
- その間、空き家を売ることも使うこともできない
- なのに、固定資産税は払い続けなければならない
「使わないから放置していただけ」のつもりが、他人に居座られ、取り戻すのに多大な時間・費用・精神的な負担がかかる。こうした事態を防ぐ意味でも、使う予定のない空き家は、早めに手放すのが安全です。
リスク③:2024年から、放置空き家の固定資産税が最大6倍に
ここが、近年で最も大きく変わった点です。空き家を放置すると、固定資産税が跳ね上がるようになりました。
そもそも、家が建っている土地は「住宅用地の特例」によって、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。ところが——この特例から外されると、固定資産税は一気に6倍になるのです。
これまでは、倒壊の危険があるような「特定空き家」に指定され、勧告を受けた場合に特例が外れる仕組みでした。ところが、2023年12月に施行された改正で、その前段階の「管理不全空き家」も対象に加わりました。 管理不全空き家とは、窓や壁の一部が壊れている、ゴミや草が放置されているなど、「このまま放置すれば特定空き家になりそうな状態」の空き家です。
つまり、倒壊寸前でなくても、”それなりに傷んで管理されていない”だけで、固定資産税6倍のリスク圏に入るようになった。放置のハードルが、以前よりぐっと下がったわけです。
放置し続けると、どうなるか(段階)
行政の対応は、いきなり6倍になるわけではなく、段階を踏みます。
- 助言・指導:この段階で片付け・修繕などに対応すれば、税は上がりません
- 勧告:指導に従わないと勧告が出され、このタイミングで住宅用地の特例が外れ、翌年から固定資産税が最大6倍に
- 命令:さらに放置すると命令が出る(従わないと50万円以下の過料の対象になることも)
- 行政代執行:それでも改善しないと、行政が強制的に解体などを行い、その費用は所有者に請求される
つまり、放置を続けると「税金が6倍」→「過料」→「強制解体の費用請求」と、負担が段階的に重くなっていく。放置は、何もしていないつもりでも、静かにコストが積み上がっていく選択なのです。
リスク④:時間が経つほど「売れなくなる」
そして、放置の最も残酷な点がこれです。傷んだ空き家は、売りたくても売れなくなる。
建物が朽ちれば、買い手は「解体前提」でしか見てくれず、価格は土地値から解体費を引いた額まで下がります。さらに放置が長引けば、庭や近隣とのトラブルも抱え、ますます敬遠される。「もう少し様子を見てから」と思っているうちに、売却という選択肢そのものが狭まっていくのです。
前に別記事(相続した不動産、買取はなぜ安い?)でお伝えした通り、買取業者はこうした傷んだ物件のリスクを織り込んで価格を出します。傷みが進むほど、その分だけ買取価格も下がる。早く動いた人ほど、高く売れる——これは放置物件を数多く見てきた立場から、断言できることです。
だから、「使わない」と決めたら早く動く
相続した空き家について、「自分や家族が住む・使う予定がない」とはっきりしているなら、放置は最も損な選択です。
- 傷む前に売れば、建物にも価値が残る
- 固定資産税6倍や過料、強制解体費用のリスクから解放される
- 管理の手間や、近隣トラブルの心配からも解放される
「思い出のある実家だから、なかなか手放せない」という気持ちは、よく分かります。ただ、放置している間に、その実家は資産から負債に変わっていく。だからこそ、「どうするか」を決めるために、まず今の価値を知ることが第一歩です。
こうした傷んだ空き家や、手のかかる物件こそ、リスクを理解して引き受けられる買取業者に相談するのが現実的です。
💡 次の一歩:まず今の価値を知る
放置するほど価値は下がっていきます。「売る」と決める前でも、まず無料で査定を受けて、今どのくらいの価値があるのかを把握しておきましょう。それが、損をしないための第一歩です。
※対応エリア:東京・埼玉
💡 解体費用、まずは一括見積もりで把握[PR]
古家の解体を検討する場合、費用は建物の広さや立地で大きく変わります。複数業者の見積もりを一度に取れば、相場感がつかめて“解体して売るか・そのまま売るか”の判断材料になります。
📌 あわせて読みたい:放置をやめて売ると決めたら、使える税の特例も確認しておきましょう。相続した空き家の3,000万円特別控除【2024年改正】(相続人3人以上は2,000万円・解体は買主でもOKに)。
よくある質問(FAQ)
Q. 空き家でも、更地にするより建物を残した方が固定資産税は安いですか?
建物がある土地は「住宅用地の特例」で固定資産税が軽減されるため、更地より安くなるのが一般的です。ただし、管理不全空き家や特定空き家に指定されて勧告を受けると、建物があってもこの特例が外れ、最大6倍になります。「建物を残しておけば安心」とは限らない点に注意が必要です。
Q. しばらく空き家のままにしておくだけで、すぐ税金は上がりますか?
放置してすぐ上がるわけではありません。行政の「助言・指導」の段階で片付けや修繕に対応すれば、税額は上がりません。ただし、指導に従わず放置を続けると勧告を受け、翌年から固定資産税が上がります。
Q. 遠方に住んでいて、空き家を管理できません。どうすればいいですか?
遠方で管理が難しい場合、放置すると劣化や近隣トラブルが進みやすくなります。使う予定がないなら、売却して手放すのが、管理の負担からも税負担からも解放される現実的な方法です。
Q. かなり傷んだ空き家でも売れますか?
売れる可能性はあります。傷んだ物件や訳あり物件を専門に扱う買取業者もあります。ただし、傷みが進むほど価格は下がるため、売却を考えるなら早めに動くことをおすすめします。
この記事の書き手について
不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。これまで300件以上の不動産買取に携わり、長く放置された空き家や、傷んだ相続物件も数多く手がけてきました。仲介業者・弁護士から相続案件の紹介を受け、査定・仕入れ・再販を行ってきた「買い取る側」の視点で、相続不動産の売却を発信しています。

